ドキュメント『シン・仮面ライダー』~ヒーローアクション挑戦の舞台裏~

シン・仮面ライダーの撮影ドキュメンタリーがNHKで放送されてました。

www.nhk.jp

https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2023041502528?playlist_id=f9dde2fc-cadd-411d-8b15-da560a75cbd8

先行してNHK-BS1で放送されていて、その評判が『パワハラ』みたいな話だったので、さてそんな感じの撮影現場だったんだろうかと、心配ではありました。

これについてはドキュメンタリーはそれ自体が『実際に起こったことを撮影したドキュメンタリーのプロデューサーによる創作物』という性質を持っていますし、見る人がそういう風に見ればそういう風に見れる(見れてしまう)ものなので、やっぱ自分でも番組見ておくべきだろうなと思ったのです。そこはNHK、ちゃんと地上波でも放送してくれたんでそれに乗っかったわけですね。

 

個人的な感想としては、

『撮影現場地獄だけど、パワハラではない』

でした。

いやはや、これは地獄ですよ。監督は『見たことないもの』を見せようとしている。じゃあ見たことないものってなんなんだ、となると、監督も見たことないので説明出来ない。

だからとにかくいろんな角度を撮影したいので、iPhoneを多用する。小さくていろんな向きで撮影出来て画質も創作に耐えうるので、いいデバイスですよね。

ミリ単位で役者やモノの配置をあれこれ指図するのも、基本としては『見たことないものを見せたい』でしょう。

何度も撮って、アクシデントが重なったものをOKとするのも、殺陣が殺陣という流れになるのを嫌うのも、偶然によって生まれる『自分の中にないもの』に良さを見いだしているのでしょう。

こういう作り方、分かるような気がします。やってみなきゃわからない。

 

でも、それに付き合う人たちは大変だと思います。

トップである監督の持っていないものが求められているので、監督の言葉はどうしても『言葉足らず』になる。それを支える中間に位置する人たちはどういう指示を下に出せばいいのかわからないし、末端の人たちは何をしたらいいのか戸惑うしかない。

逆に言えば『全員が創作者で在れ』ということなのでしょう。

それを求められた関係者全員、気の毒すぎる。

でもまあ、これが庵野秀明という監督なのでしょう。ほんとカントク不行届だよ。

監督不行届 (FEEL COMICS)

個人的にびっくりしたのは

最後の戦闘シーンの動きをつけているところで、監督がダメ出しして(マスクを剥ぐ動きを)『頭っからいきましょうよ!』って声を荒げたシーン。NHKのドキュメンタリーに映る庵野秀明はいつもどこか気怠げだったのですが、ここだけは声に籠もったエネルギーが違いました。そこは言わなきゃ伝わらない、と思ったのか。

まあ結果としてみんな煮詰まってしまって、もうやめるか、みたいな雰囲気も出たんでしょうけど、そこで庵野監督が『すみませんでした』って謝った(らしい)というのが、すごかったですね……謝るんだ……まあ謝られたら「頭上げてください」ってなっちゃうよな……庵野監督、人誑しすぎる……これ計算じゃないんだろうね……そういう人なんだわ……そりゃ親密な人たちが「この人には私が付いていないと……!」ってなるわ……

こー、ものすごい現場を見てしまったな……って気持ちになりました。

 

まだ『シン・仮面ライダー』を観ていないのですが、なんとか都合つけられたらな、と思います。

あと

主演の池松壮亮さん(Twitterでは字を間違えてた)の、監督に対する解像度が高すぎますね……相思相愛かよ……