オルクセン王国史二次創作『使用火器の規格共通性についての一考察』
🔫使用火器の規格共通性についての一考🔫
アンファウグリア旅団旅団長、ディネルース・アンダリエルの『衝撃的な告白』は、瞬く間に衛戍地内のダークエルフたちに広まった。本人が傾注しろと言ったのだから、そりゃみんな聞いている。ディネルースが自分の意思でちょっと大きな獲物を『仕留めた』ことを快挙と喜ぶ者もいたし、それでもなお『おいたわしや姉様』と涙する者もいた。
なにせ生き残ったダークエルフは1万2千人。軍隊に入った者は8千人もいる。反応は様々であったが……その中でも下世話な話が好きな者たちの話題は——もちろん。
『ダークエルフにオークのアレは装填出来るのか?』
「仕留めたと言っているのだから、装填可能なのでは?」
「Gew74式銃に数字がひとつ違うだけだからって75ミリ砲の弾を装填出来るか?」
「例えが悪い。せいぜい57ミリ山砲では」
「どっちにしろ装填できんだろ」
こんな話を、白ビール飲みながら話していたのである。
「エルフのお嬢さんたちも、けっこう下品な話するんだねえ……」
「待ってくれ、あの酔っ払いどもをダークエルフの代表にしないでくれ」
酒場にはそんな嘆きも聞こえたとか。
中には興味本位でオークの牡(おとこ)に近づいてみた者もいたようだが……『装填』以前にお互いに『戦闘態勢』にならなかったという話もある。これはそもそも異種族同士で『夜間戦闘』をする『気持ち』になりにくいのもある。
オーク族は確かにそういう『戦闘』が大好きな種族だが、かといってオルクセンに生きる現代オーク族がそういう『戦闘教義(ドクトリン)』を持っているわけではないのだった。
酒場に話を戻すと。
「弾の種類の話ではない」
「直射は無理でも曲射ならば」
「撃ち方の話でもない」
「むしろ青銅製の前装砲ならば?」
「おじいちゃんって意味かなんだそれ」
それはもうひどい有様だったので、ここまでにしよう。
マジごめんて。
オルクセン王国史二次創作『やればできる。』
先日発売になった『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』3巻、著者の樽見京一郎先生から著者献本をお分けするというお申し出があり、謹んで承りました。いやー、下ネタとか描いてて本当に申し訳ないのですが。
真新しい印刷物のインクと紙の香りは、なんとも言えませんね。
紙書籍版、電子書籍版、そしてコミカライズと絶賛発売中だそうです。
そんな3巻を読みながら、星欧世界において人間種は弱いのか?という疑問があり、自分なりにストレートに表現してみたのが、この小話です。
🕑オルクセン二次創作『やればできる。』🕚
人間族と魔種族——例えばオルクセンにおいて多数派であるオーク族とを比較すると、魔種族の方が生物として優れている点は、枚挙に暇がない。
「極端な話、私のような女の細腕でも、人間族の成人男性を殺傷せしめることは可能なわけ。体格が違いすぎるから」
と、同室の住人であるオークの牝(おんな)はからから笑った。
そりゃそうだろう。圧倒的に体重が違う。それを支える骨格が違う。
「君たちダークエルフ族も、多分人間族を圧倒しうる。もちろん筋力ではなくて、魔力とか、夜目を活かした闇討ちとか」
わかる。私自身にはちょっと無理だが、一般的なダークエルフならいとも容易い。
「だけど。だけどよ、この星欧には、人間族の国の方が圧倒的に多くて、圧倒的に繁栄している。なんでだと思う?」
この牝(ひと)の言い方には、そんなことないオルクセンはおそらく世界で最も繁栄している国だろう、と思ったが、本題はここからなんだろう。話の腰を折らないようにしておく。
「んん……子供の数が、多いから?」
「ほぼ正解。そうね、人間族は、私たちよりはるかに多くの子供を産み育てることが出来る。オークの夫婦が生涯にもうける子供は、一人か、多くて二人。でも人間族は違う。国や生活環境で違うんでしょうけど、3人兄弟4人兄弟なんてざら」
「はあ」
ダークエルフ族の私には『兄弟』という概念がちょっとよく分からない。私たちのいう『姉妹』とはよく似ているけどもっと狭い意味を持っている言葉だ。
「星欧諸国の王族の家系図なんてすごいわよ。下手すると二桁の子息がいる。そして、不思議なことに貧しい家庭でも子供は多くなる」
エルフにとって子供とは白銀樹からの『授かり物』。オークにとってもやはり大地からの『授かり物』。だが人間族の場合には、それがとても多いのだ。
「人間族が信仰している『神様』というのは、よほど気前がいいのですね」
「そうよねえ。まあ、ヤることヤったらすぐデキる、ってことなんだけどね」
そういって彼女は右手の親指と人差し指で作った輪っかに、左手の人差し指を差し込んで前後させた。何をやっているんだろう。人間族的なハンドサイン?
「あー、そっか。エルフには『そういう概念』あんまりないかー」
何の話だろう。首を傾げる。
「まあいいの。分からないなら分からないで。いつかわかる日も来るわ。その時はよろしくね。
でも、実は子供の数は必ずしも本質ではないのよ。
人間族の本当の強さは、その世代交代の速さにある」
「世代交代、ですか?」
子供の数の話をしていたら世代交代の話とは。
ん?
「……それって、要するに人間の寿命が短い、ってことですよね?」
「そう。私たちに比べて人間は、怪我をしなくてもすぐ死んでしまう。60年生きたら上出来。たくさん生まれてすぐに死んでいく、そこが人間族の本質よ」
「それってつまり?」
「人間族は私たち魔種族の一生と比べて、ピークが短い。でも生まれる数は多いから、種族全体としては次々とピークを迎え、そしていなくなる。でもいなくなる頃には次の世代がピークを迎え、新しいピークが続いていく……」
「ええと……それは、技術革新の速度とか、そういう話だったりします?」
「そのとおり。私たち魔種族は、一つこれと決めたらその長い一生でとことんまでそれを続けることが出来る。
でも人間族には、単体としてはそんな時間がないのよ。すぐに次の世代に交代する。そして次の世代は次の世代なりにものを考えて、やっていく。
要は、更新速度が速いのよ。多分、魔種族が持っている優れた技術も文化も、人間族はじきに乗り越えていく。イヤよねえ。あなたが勉強している数学の未解決問題も、わたしの研究している計算機も、多分人間族がほんの数世代でまったく違うやり方を思いついて、先を行くわ」
そうなんだろうか? 私や彼女一人が持つ長い時間の方が、圧倒的に有利な気もするが。
「それならそれで、数世代の人間が思いついたことを、そのまま私が勉強すればいい話では?」
「あはは。それもまあそうね。やっぱあなた、エルフだけあって気が長いわ!」
そうなのかも知れない。カレンダーを数十枚かめくったら、人間族の国の方が、ずっと栄えているのかもしれない。
それもまあいい。多分、彼女も私も、それを目の当たりにすることが出来るだろう。
私たちは魔種族、人間族よりもはるかに長い寿命を持つ異形。
『オルクセン王国史』二次創作 『オルクセン百合』その2
オルクセン王国史、大変人気があるらしい。素晴らしいですね。で、オルクセン百合、書く書くと言ってて全然進んでなかったのですが、ようやくとっかかりが見えたので、ちょっと話を動かしてみます。
その1はこちら。
⚜️オルクセン百合⚜️
ウィルヘルミナ・イムライスフェルトの話
私、ウィルヘルミナ・イムライスフェルトの実家は、農家だ。
幸いにして先祖から受け継いだ農地はそこそこ広く、両親はそこでジャガイモとテンサイを育てている。芋畑で芋ばかり育てていると育ちが悪くなる。そこで芋をやったらテンサイ、テンサイをやったら芋、と交互に育てる。ときどき豆を育てたりもするが、二年続けて同じものは栽培しない。
父が、王様に習った栽培法だという。子供の頃から「王様に教えていただいたんだぞ」って自慢していた。本当だろうか?
しかし私は、親不孝にしてあまり土いじりが上手な方ではなかった。好きとか嫌いとかではなく、畑に出ていると目や鼻がかゆくなり、腕に湿疹が出来てしまう。野菜に触れた時にひどくなるので、さすがに両親は畑を手伝えとは言わなかった。言わなかったが、それでも父に必要なのは手足となって働く人々だった。
働き者の父は、先祖の畑だけではなく、開墾までやった。どんどん広くなっていく農地。年々忙しくなる父。東の畑を耕したと思ったら西の畑で収穫をし、南の畑の草むしりの次は北の畑で用水の修繕だ。そうしている間にも手伝ってくれる人に子供が出来たり、結婚祝いをしたり、葬式の弔いをしたりせねばならない。これはもはや単なる農家ではなく、地主としての農場経営だった。
なので私は、家で帳簿を手伝った。農業に入り用なものは多い。それの在庫管理から始まって、仕入れやその支払いも手伝うようになった。
父も母も、よく働く。だから私も、まあ邪魔にならない程度に帳簿を頑張った。何しろ農業というのは大事な産業だ。
ジャガイモはオルクセンという国になくてはならない野菜だし、最近とみにテンサイの需要が高まっている。テンサイは、知っての通り砂糖の原料だ。きっと都会の人たちが料理に砂糖をよく使うようになったからだろう。軍隊でも食事を作るのによく使うらしい。甘いものはおいしいものね。
あんまり高く売れるものだから、父はいっそ加工品——すなわち砂糖にまで加工しようと考えた。この発想は、最初こそいろいろ失敗もあったが、結果として数年でうまく行くようになった。
加工という手間をかけた砂糖は、テンサイをそのまま売るよりもはるかに大きな現金収入をもたらしてくれる。農場で働く人々には対価として、現物渡しでなく現金を渡すことすら出来る。その計算はもちろん私がやるわけだが、現金を受け取る時のみんなは笑顔だもの、やりがいがなくもない。
だが、ふと思った。
農機具やら堆肥やらを仕入れて、人を使って芋や砂糖を作り、どんどん出荷して、みんなに給料を払う。
これはもう、企業というやつなのではないか。
そう考えた私は、経理などをより学ぶため、大学への進学を決意した。
実家は田舎すぎて大学なんてなかったから、どこか遠くの街に行くことになる。父も母も賛成してくれた。婿を取れと言わなかったのがありがたい。
そして私は首都ヴィルトシュヴァインにある大学で商学を学んでいたのだが、たまたまちらっと覗いた数学科の教室で、驚くべきものを見た。
『計算機』である。
横長の金属の箱の上には、チェスのコマみたいなもの(『カーソル』と数学科の先生は呼んでいた)がいくつも並び、左側面にはグルグル回すためのハンドルがある。
まだ研究の途上だと聞いたが、これが自分の実家で使えたら、どんなにか素早く仕事が出来るだろうか……
そう呟いたら、先生は、もっとすごいことが出来ると言った。
より高度な、多元方程式すら、機械で計算出来るようになる。星や月や太陽の動きのように、あらゆるものの運動は計算可能で、その計算を機械でやれば、たちどころにずっと先のことまで分かるようになる。そんな未来が、この機械によって切り開ける。
先生は一生懸命計算機のハンドルを回しながら、そんなことを言っていた。ハンドルを回す先生の目のかがやきにも、未来を感じた……コボルト族パグ種の人って、たまに目が飛び出しそうで怖いけど、目はキラキラしてた。
面白そうだな、と思った。芋や砂糖の相場の予想にも、そういうのは使えるのではないだろうか、などと。おやおや。相場の先が分かるとなったら、私は金持ちになるしかないな。
そんな流れで、私は数学科のとある研究室に、ときどき通うようになった。いや、あくまで趣味として、よ?
初出:https://x.com/siidekei/status/1834202791239184794
彼女の名前ですが、ウィルヘルミナは世界で初めて自動計算機を作ったヴィルヘルム・シッカートからとりました。女性形ですね。ファミリーネームのイムライスフェルトは『Im Reisfeld』とドイツ語の単語を繋げて勝手に作りました。『田んぼの中』……つまり、田中さんです。
