産業革命前夜、の予感──『くじびき勇者さま』1番札

くじびき勇者さま 誰が小娘よ!? (HJ文庫)

くじびき勇者さま 誰が小娘よ!? (HJ文庫)


清水文化HJ文庫で始めていたシリーズの、第1巻。ようやく読みました。別に積ん読してたわけじゃありません。スルーしてたんです。
なんでって……ほら、なんか、タイトルが
くじびきアンバランス (MF文庫J)
なんか、くじびきアンバランスっぽくない? くじ引きですべて決めていく、という世界観が何となく気にくわなくって、どちらもスルーしてたのですよぅ。
しかし、しかしです。6巻のあらすじを知って、椎出は慌てたのです。

機関車を発明して、さらにその名声を上げるメイベル
(6番札 誰が初代大統領よ!? あらすじより抜粋)

しまったあっ! 主人公は発明おバカの女の子だったのかあ!
というわけで、とりあえず本屋にあった1〜4巻を買ってきたのでありました。

1巻は、主人公たるメイベルが旅に出るに至った経緯が書かれたエピソードなのですが、よく考えたら、くじ引きですべて決めるという世界観なんだから『くじ引きました当たりました』で終わりじゃんっ!
特殊な世界観を設定すると、実もフタもないことがよくあります。ええ。
てなわけで、見所は『くじを引くに至る経緯』にあるわけです。さて、主人公は如何にしてくじを引くのか!
……主人公のメイベル、すっごいくじ引き嫌いなんですけど……なかなかくじを引こうとしないんですけど……(笑)
その代わり、メイベルはとてつもない好奇心と探求心の持ち主。気になった事は納得がいくまで調べ、そしてその知識を自分のものにしていく事が出来ます。解説好きなのはご愛敬。でもそのおかげで、この世界がただの『くじ引き世界』ではないことが、メイベルの口から語られていきます。
物語冒頭、水力を利用した『水力列車』(サンフランシスコのケーブルカーに近いですね)の原理がメイベルによって語られる段階で、いやでもこの『くじ引き世界』に引き込まれていきます。街の市場には新しい食べ物『アイスクリーム』が登場し、優秀な料理人でもあるメイベルはさらに美味しくするレシピをその場で思いついたり。そう。この世界には製氷装置もあるのです。剣と魔法が幅を利かせる世界ですが、産業革命前夜、あるいはスチームパンク前夜ともいうべき雰囲気は、『気象精霊記』で様々な気象現象をライトノベルの枠でネタにして成功した清水文化らしく、実に面白いものでした。
そんなメイベルも残念ながら『くじ引きですべて決まる』という世界の仕組みには抗えるわけでもなく。仕方なく引いたくじで見事大当たり。世界を救う勇者の従者の座を射止めてしまいます……というのが、大まかなあらすじ。まだ旅がはじまってないところで1巻は終わってしまったので、これから続きを読みます。ええ。

あ、今回はオチなしです。清水文化の作品でいつも思うのは、なぜか登場人物でピンク色のネタが思いつかないことなのです。なかなか手強い作者です。
でも見てろよっ……きっとメイベルであんなこととかこんなこととか妄想してやるんだからっ!