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電撃リトルリーグ合わせ『十五年目の告白(15ー3ー3)』

掌編

またしても電撃リトルリーグに送ってみた。
というか、書いてみたら書けちゃったので、送ってみた、というか。


藍澤さんの電撃リトルリーグ用投稿作品「十五年目の告白」藍澤優版その1 | Drupal.cre.jpをベースにした上で、自分なりに納得のいく展開に変更してみたもの。

「もぉーいぃーかぁーいぃ?」
「まぁーだぁーだぁーよぉ!」
 15年前のかくれんぼ。私とお姉ちゃんは三つ違い。私の着る服は、いつもお姉ちゃんのお下がりだった。
 私が三つ年を取れば、お姉ちゃんも三つ年を取る。永遠に追いつけない鬼ごっこ。時間を隔てたかくれんぼ。
 でも、そのとき。たまたま私は。
「えへへ。ここなら、ぜったい、みつからないよね!」



「ふぇーえ、ふぇーん!」
 どうしたの、いったい? 泣いていちゃわからないわよ?
「みっちゃんがぁ、みっちゃんがいないのぉ」
 またかくれんぼしていたの? この区画に入っちゃダメって言ってたじゃない。
「でもぉ、でもぉ、ふぇーん!」
 お腹がすいたら、みっちゃんも戻ってくるわよ。
「ちがうのぉ、あっちのとびらから、ごとんって、ぷしゅーってぇ!」
 え? あっちの扉? なんですって?
 大変だ、緊急ポッドが一つ、離脱している!
 嘘……そんな!



 軌道を計算してみま……ポッドをこちらから回収……現状不可能……本船は超光速での航行中で……ポッドは減速しつつも本船と同じ軌道を……航行計画通りなら……千九十八日後にポッドが追いつ……



 みっちゃんがいなくなった時のことを、わたしはよくおぼえています。みっちゃんはわたしのいもおとです。大じな大じな、妹です。
 お母さんは、みっちゃんのことを話しません。お話ししたくないそうです。
 わたしは、みっちゃんのこと、もっといっぱいお話したいです。
 お父さんも、みっちゃんのことをお話ししません。でも、一どだけ、こう言ったことがあります。
「みっちゃんには、三年ごにあえるよ」
 お父さんがけいさんしたら、そうなったそうです。
 みっちゃんがいなくなったのは、二年まえです。
 だから、あといち年で、みっちゃんに、あえます。
 わたしは、みっちゃんにあうのが、とても、とても、たのしみです。



 また、かくれんぼの時の夢を、見ていたらしい。
 あのとき。私は、ただひたすら、お姉ちゃんに見付からないようにとだけ考えて、このポッドに潜り込んでしまった。
 小さな子供に勝手に潜り込まれる緊急ポッドというのも、いかがなものだろう。
 まあ、いまさら責任を追及しても仕様のないことだと、思うが。
 この緊急ポッドは、重大な事故が発生したときの脱出用に作られたものだったようだ。光速航行中の船から放り出されても、徐々に通常航行の速度にまで減速して、救難信号を発信する。重傷者を収容しても大丈夫なように、オートマトンが衣食住の世話をしてくれるようになっていたのは、年端もいかない幼子だった私にとって幸運だった。
 様々な本があったので、言葉を覚えることも出来た。簡単な質問なら答えてくれるだけの人工知能をもったオートマトンが、私の先生だ。残念ながら、私は既にこの狭い世界の先生を超えてしまったようだが。
 一丁前に循環環境を持ったこのポッドで、私は一人、かれこれ15年過ごしている。
 時間だけはたっぷりあったので、このポッドの軌道計算を試みてみた。ついでに、データとして残っていた、お姉ちゃんたちのいる船の予定航路も。
 どうやらこのポッドはお姉ちゃんたちの船と全く同じ軌道を進んでいるらしい。だから、お姉ちゃんたちが途中で止まってくれていれば(止まらなくてもいい、減速してくれていれば)いつかはお姉ちゃんたちに、会えるはずなのだ。そのいつか、とは、ポッドが切り離されてから、およそ15年後。
 その結果を知ったとき、私は、結構絶望した。
 しかし。
 ポッドの中での15年は、お姉ちゃんたちの船の時間では3年ほどにしかならない。ウラシマ効果、と呼ばれる現象のせいだ。
 ということは。
 再会したとき、私はお姉ちゃんより15ー3ー3=9歳年上になるのだ。
 ふふふ。
 ちょっと嬉しくなり、胸を張ってみた。



 そして。



 ごとん。



 ポッドが、揺れた。
 あの15年前の、ごとん、以来。初めて。
 いよいよ!



 ごとん。



 わたしも、作ぎょうを見せてもらいました。
 おおきなアームで、はっ見したポッドを、つかんで。ふねの中に入れました。
「まだ? ねえ、まだ?」
 お父さんは、かあつ、がおわるまでまちなさいと、いいました。だからわたしは、まちました。いままで三年まったので、がまんしました。



 ぷしゅー。



 どうやら、周りの空間に空気が満ちたらしい。
 いよいよ、お姉ちゃんに会える。
 ……待て。お姉ちゃんは、三年で15歳分育った私のことを、私だとわかってくれないかも知れない。
 いまさら、そんな不安が。
 ああでも、ハッチが開く。開いちゃう!



 ぷしゅー。



 お父さんが、もういいよ、というのを聞いて。わたしはすぐに、かけだしました。
 みっちゃん。みっちゃん、みっちゃん!



「……みっ、ちゃん?」
「お姉、ちゃん……」
「えへへ……みっちゃん、みぃつけた!」
「お姉ちゃん……」
「みっちゃんおっぱい大きくなったね! お姉ちゃんのお古、もう着れなくなっちゃったね!」
「……お姉ちゃん、ただいま!」

IRC log: #もの書き外典 2008-10-23
加筆修正に付き合って下さった皆さんに感謝。