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親子丼シリーズ『同人誌版書き下ろし分・銭湯』

*銭湯、その1
『石鹸でしょー、シャンプーでしょー、リンスでしょー』
『どうしたんだ、いきなり』
『銭湯、行くのよ』
『あー、そーか。いっといで』
『なにいってんの。いっしょに行くのよ?』
『は? オレもか?』
『当たり前じゃない。この物騒なご時世、湯上がりのあたしに一人で夜道歩かせるつもり?』
『ロリコンに気をつければ、大丈夫だろ。普通の痴漢がアレコレするには、発育不良だしな』
『ひどっ!?』
『湯あたりしないようにな。あと、ちゃんと髪は洗うんだぞ』
『子供扱いしないでよっ!』
『風呂から上がったら、ビン牛乳、買って飲みな。100円だったか?』
『わーいありがとー♪』
『……子供以外のなにものでもないよな』

*銭湯、その2
『大体、なんでいきなり銭湯なんだ?』
『えっ、えっとね、ほら、たまには、おっきいお風呂、入りたいじゃないっ!?』
『そりゃまあ、そうだけど』
『でしょでしょでしょ、だから、ほらっ、こんなちっちゃいお風呂、入れなくっても大丈夫じゃないっ!?』
『……?』
『気持ちいいわよっ、おっきいお風呂! 足も伸ばせるし! 飛び込めるし! 泳げるし!』
『飛び込むなよ! 泳ぐなよ!』
『だってぇ……』
『まさかお前……』
『ああっ、お風呂見ちゃだめぇっ!』
『飛び込んだのか、ユニットバスにっ!? ああ……湯船が……ひび割れてる……修理代いくらかかるんだよ……』
『ご、ごめん……ごめんね……』

*銭湯、その3
『わーい、お風呂お風呂ー♪』
『そんなにはしゃがなくてもいいだろ』
『いいじゃなーい。二人で銭湯、ってところがポイントなんだから』
『はぁ?』
『昔からよく言うでしょ、ええと……ほら、神田川
『……歌うと著作権料かかるぞ』
『だいじょうぶよー』
『大丈夫じゃねぇよ。iPodにも課金しようとする連中だぞ』
『だって『料理は心や!』だもの!』
『俊郎は違うだろ、俊郎は!』

*銭湯、その4
『えっと、お財布お財布……』
『ここで財布忘れてたりはしないだろうな……』
『だ、だいじょうぶよぉ……ええと……』
『……大丈夫じゃなかったみたいだな』
『ぐすん……お願い、貸して。一生のお願い〜』
『いいけどな……ほれ、二人分』
『わーいありがとーっ、一生ついていくよーっ!』
『まったく……って、おい』
『なぁに?』
『どこまでついてくるつもりだ』
『一生よ?』
『男湯についてこなくてもいいんだよ、つーか、ついてくるな』

*銭湯、その5
『ねーっ、聞こえるーっ!?』
『……(バカ、でかい声出すなよ……)』
『ねーってばーっ!』
『……(迷惑だろ……)』
『出るときはねー、そっちから『出るぞーっ』って言ってねーっ!』
『……(誰か言うかっ……)』
『ねーっ、聞こえてるんでしょーっ!?』
『……(しかしでかい声だなー……)』
『あーいーしーてーる〜〜〜〜〜っ!』
『どさくさに紛れてなに叫んでるっ!?』
『お風呂の中心で愛を叫んでまーすっ!』
『お願いだから叫ぶなよっ! 静かにしてろよっ!』

*銭湯、その6
『石鹸投げてーっ!』
『持ってるだろっ!?』
『壁越しにぽーんって、やってみたかったのーっ!』
『ええいうるさいヤツだなぁ……ほらよっ!』
『あーっ!?』
『なんだよっ!?』
『湯船まで飛んでったーっ!』
『いっ!?』
『泡風呂泡風呂ーっ!』
『ちがうだろっ! 拾ってくれよっ!』

*銭湯、その7
『あーっ、いいお湯だったーっ!』
『こっちはくたくただよ……』
『じゃあ、マッサージ機でも座る?』
『旧式のだろ、あれ……いいよ。かえって痛くなるから』
『んー……それじゃあね、あたしがマッサージしてあげる』
『えっ……いいよバカ、はずかしいっ!』
『ほら座って座ってー!』
『(うわ、なんか柔らかかったりリンスの香りがしたり……おいおいーっ!?)』
『おにいさんはじめてー? どこからきたのー? がくせいさんー?』
『……なんでそーいうネタに走るんだよっ……!?』

*銭湯、その8
『なに悩んでんだよ、冷蔵庫の前で』
『ビン牛乳とビン入り林檎ジュース、どっちが美味しいかな……?』
『好きな方にすればいいだろ。買ってやるからさ』
『うーんうーん……両方買っちゃダメかなぁ?』
『子供かお前は』
『だってー……』
『あ、おっちゃん。俺コーヒー牛乳ね』
『……コーヒー牛乳は邪道っ!』
『うるさいなあっ! 人に構ってないで自分の決めろよっ!』

*銭湯、その9
『えーっと、18番18番、っとー……』
『お前いつもコインロッカーとか、18番だな』
『うん。だって誕生日の番号だったら、忘れないでしょ』
『そりゃまあそうかも知れんが』
『あたしって賢しこーいっ! どう、みなおした?』
『いや、全然』
『なんでよーっ』
『だって、カギに番号書いてあるから、判るだろ……?』
『……カギなくしたら困るでしょーっ! バカっていわないでよバカーっ!』
『バカって言ってないし……カギなくす方が悪いし……ああもうどこからつっこんだらいいのやら……』

*銭湯、その10
『たまには銭湯って、いいねー?』
『ああ。風呂壊されてなきゃ、最高だったな』
『過ぎたことは忘れようよ?』
『過ぎてねぇし』
『んー……ごめん』
『……まあ、たまには、いいかもな』
『えへへ……でしょ?』
『ほら……湯冷めするぞ。夏って言っても』
『え……っ……ちょ、ちょっと、ねえ……ぎゅうって……ねえってば……』
『……なにも言うな。自分でも、かなり恥ずかしいから』
『湯冷めどころか……湯あたりしそう、あたし……♪』