読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

電撃リトルリーグあわせ『夏の終わりに届いた(はずの)メール』

電撃リトルリーグ
こんな賞があるらしい。新人賞っぽい代物で、レギュレーションは『2000文字以内』ということ。短いっ。
で、この分量なら書けるんじゃないかしらん? と思って書きはじめてみた。


……予想以上に難しかった(笑)
IRC log: #もの書き 2008-08-21



「……なにしに来た?」
「うふふ。相変わらず、蒸し暑いボロアパートね」
「やかましい。学生のくせにオートロック付きの1LDKに住んでるような奴に言われたって、これっぽっちも悔しくねえ。悔しくねえ」
「なんで二度言うの?」
「とてもとても大事なことだからだ。人生においてオートロック付きのマンションと昭和の遺物のアパートにはそれだけの違いがあるからだ」
「……要するに悔しいんじゃないの」
「……判ったか?」
「判るわよ。っていうか引っ越せばいいのに」
「貧乏学生には引っ越すなんて選択肢はないんだよ……麦茶しかないけど、いいか?」
「えー? アイスティぐらい出しなさいよ」
「……歩いて3分のところに自販機あるぞ」
「今から買ってこいっていうの? この炎天下の中を? もう9月だっていうのに相変わらず蒸し暑い、この中を?」
「ああ」
「白魚のように透き通った肌のこの私に、自分の足で歩いて行ってこいっていうの?」
「そうだよ。つーか太ももを人の目の前に突き出して言うな」
「ほらほら、白いでしょ?」
「いいからしまえ。そして自販機に行ってこい」
「嫌よ」
「じゃあ麦茶だ。本日早くも3回目のリサイクル、出がらしの麦茶で我慢しろ」
「それってもう麦茶のような別のものじゃないの」
「これを俺は麦茶と呼んでいる」
「普通は呼ばないわよ、多分」
「いちいち文句の多い奴だな」
「文句じゃなくて当然の主張よ」
「仕方ない。とっておきのを出してやる」
「なんだ、ちゃんとあるんじゃない」
「二週間前に買ったコーヒー牛乳」
「……それお客に出すものじゃないでしょ」
「まだ開けてないから、大丈夫だぞ。多分」
「ダメでしょ、普通に」
「ふたを開けるまでは、セーフかアウトか判らない。つまりセーフなコーヒー牛乳とアウトなコーヒー牛乳が入り交じった状態なんだ」
「セーフとアウトが混じったら、それはアウトなコーヒー牛乳に決まっているじゃないのよ」
「……言われてみればそうだな」
「はー……あなたの家でまともな飲み物が出てくるわけないわよね。買ってきててよかった」
「持ってきたのかよ!」
「ええ。念のためにね……はー、おいしい」
「……自分の分だけかよ。ホント、なにしに来たんだお前?」
「あ、そうそう。聞きたいことがあってね」
「なんだ?」
「なんかね、ケータイでメールが送れないのよ」
「どこにも送れないのか? 料金払ってるか?」
「ちゃんと払ってるわよ! でも、どうやってもメールが送れない相手がいるのよ」
「一人だけか?」
「ええ。どうしても送れなくって」
「なんだそりゃ……ちょっとみせてみろ」
「え? ケータイを?」
「この流れでお前のパンツ見せられても困るわい」
「パンツはいいけど……ケータイはダメよ!」
「それでどうしろって言うんだよ。つーかパンツはいいのか」
「見る?」
「見ねえよ」
「あら残念」
「見せたいのかよ」
「うーん……微妙なところ?」
「お前の言動が微妙すぎるわい……で、メールの方は、受信は出来るのか?」
「出来るわよ」
「その、送れないって相手からの受信は出来るのか?」
「うーん。どうかしら」
「わかんないのか?」
「だって……めったにメール使わない人だもの」
「そんな相手にメール送るのか?」
「え……だ、だって、ほら、ねえ?」
「なにが『だって』なのか判らんが……」
「普段、ほら、メールのやり取りとか、ね、してなくても……たまに送りたくなることとか、あるじゃない、ね?」
「どうした、急にきょろきょろして?」
「……どんだけメール送っても返信しないじゃない……だから……どうしても……送る回数とか少なくなるし……」
「ぶつぶつ、なに言ってる?」
「なっ、ななな、なんでもないわよ!」
「そうか?」
「そうよ!」
「うーん……相手が受信拒否とか、してるんじゃないか?」
「なんですって!? そんな設定してるの!?」
「俺に掴みかかってどうするっ。相手に聞けよ」
「あ……そ、そうね……」
「それか、もしかして、相手がメアド変えたとかじゃないか? 迷惑メールが多くてさ」
「なるほど、それはありそうよね」
「俺も、最近変えたんだよな」
「ええっ!? そうなの!?」
「な、なんだ大声出して?」
「聞いてないわよ、変えたなんて」
「そうだったか? じゃあ変えたメアドで送っとくわ」
「そ、そうして頂戴、そうしなさいっ、今すぐ!」
「あ、ああ……何でそんな血相変えて言うんだ……?」
「……あ、うん。届いたわ。オッケー。じゃ、私、帰るわね」
「お、おう……あれ? メールが送れない件は、いいのか……?」
 そして、五分後。
「ん? メール? 久々だな……誰からだ……あ、アイツからだ……」
件名:やっと送れた
本文:やっと送れたわ。明日、デート、しない?っていうか勝手にメアド変えるんじゃないわよ!遅刻したら許さないからね!
「何時に行けばいいんだよ、おい」