『PTRPG バレンタイン・ミス』その2

 昼休み。
 聖応学園女子中学校は、名前の通り、女子ばかりである。
 だが、と言うべきか、だから、と言うべきか。昼休みは、それはそれは、にぎやかである。
 さすがに今の時期、外は寒いけど、校舎のあちこちで様々に彩られたお弁当の花が開いている。
 ついでに今日は2月14日。憧れている先輩とかにチョコをあげたり、かわいがっている後輩からチョコをもらったり。そんな風景も展開されている。
 三夜は、そういうのがうるさく感じられて、一人で屋上にいた。
「三夜ってさ、寒くないのー?」
 それを見つけた時乃が、寒さに身をすくめながら(だったらスカートそんなぎりぎりの長さにしなけりゃ良いのに)話しかけるも。
「うるさいよりはマシ」
 わざわざオーバーコートを着て、マフラーして。そんな姿で、三夜はコンビニで買ってきた焼きそばパンを食べていた。足下にはタイツも身につけて、防寒重装備である。だが、どれもこれも黒系統というのは、少々三夜の美的感覚が疑われそうだ。つーか、黒づくめである。真っ黒だ。
「んもー。そんなんじゃ、ダメだって。キリ姉ェにももっと人と話、しなって言われてるでしょ。せめて教室でお昼食べれば寒くも」
「うるさいのは嫌い」
 時乃の言葉を遮るように、言い切る三夜。とりつくしまがない。キリ姉ェというのは、三夜のかかりつけ医。三夜、薬が手放せないので、週一回のペースで、診察を受けている。一応、そうしろと言われているから。
「……もー。困ったさんだなぁ、三夜は」
 そういいながら、時乃はとことこ近づいて、手に持っていたものを三夜の頬に押しつけた。
「うりゃ」
「邪魔」
「ひどいなぁ。あたしからの、ヴァレンタイン・プレゼント、な・ん・だ・ぞ♪」
 押しつけたのは、缶入りのホットココア。
「うりゃうりゃ、お礼いいなさーい♪」
 ぐりぐりと押しつける。抱きついて、胸も押しつける。
「……邪魔」
「お礼も言えないような子に育てた覚え、ないんだけどなー」
「育てられた覚えも、ない」
「にひひひー」
 にまー、と微笑む時乃。
 きりがない、そう思って、三夜はホットココアを受け取った。
 持ってくる間に少し冷めたココアは、三夜の、実は好みの暖かさだった。



話が全然進みません、隊長!(笑)