『PTRPG バレンタイン・ミス』その1

「チョコレートの……エイリアン……」
「人間サイズのチョコレート……なんかキモっ」

 黒ずくめの戦闘スーツに身を包んだ大野三夜と、ずいぶんエロティックなナース服の佐奇森時乃。
 二人の闘う少女の前には、人間サイズで人間型のチョコが、わさわさと蠢いていた。


バレンタイン・ミス
PTRPGより(全年齢版)


 2月14日というのは、中学生の少女にとっては、まあ、それなりに気になる日。
 あげるかあげないかはともかくとして。
 相手がいるかいないかはともかくとして。
 相手がいなけりゃ、つくっちゃえばいい。
 そういう日なのだ、セント・ヴァレンタイン・ディとは。
「ヴァレンタインデーって、そーいう日なのよっ!」
 力説する、時乃。握り拳を振りかざし、教壇で仁王立ち。このまま放っておくと、立てよ国民ッ! とか、あえて言おう粕であるとっ! とか言い出しそうな勢いだ。何が粕なのかは不明であるが、そういうことを言い出すのが、時乃という少女である。
 だが、視力の問題で最前列の席に座っている三夜は、黒縁眼鏡の奥の瞳を、生暖かいまなざしにしていた。
「あ、そう」
「ダメよダメよ、ダメダメよ三夜ッ! 人生のイベントは大切にしなきゃっ!」
「……なぜ1年生の教室で、先輩が叫んでるの?」
 1年1組の教室。
 3年9組の時乃は、
「えーと」
 と口ごもってから
「些細な問題よっ!?」
 と言い切った。
 それに対して三夜は
「もうじき授業、始まるから」
 と言いきった。
 2時限と3時限の間の、長休み時間。さっき体育の授業だった時乃は、体操服のまま、1年1組の教室に来て、三夜を相手に演説をぶっていたのだ。
 薄手の体操服に隠された成長順調な胸が、語気の荒さを表すように、縦に横にと震えていた。
「えっ!? もうそんな時間?」
 そんな時間もなにも
「休み時間はあと2分。1分59秒、58秒」
 ケータイの時計を見ながら、三夜。
「うわぉぅ〜っ!?」
 時計を見て叫ぶ、時乃。あわてて教壇を降り、駆け出す。
「じゃあね、三夜〜! またお昼休みにねーっ!」
 席に座ったまま、その様子を一瞥した三夜は、ぽそりと一言、
「半袖体操服……なぜ?」
 とだけ呟いた。
 2月14日のことである。



PTRPGは備前屋さんがやってる、18禁TRPG
それを全年齢向けの百合百合バトルコメディにしてみようというたくらみ。
ちゃんと書き終わるかどうかは、神のみぞ知る。